ベンチャー企業への転職について

初めまして
ベンチャー企業経営者の鈴木です。

私は大学を卒業して出版社に入って、雑誌を作っていたのですが、企業経営に興味があって、アメリカのCPAという公認会計士の資格を取得し、監査法人に転職しようと考えていたタイミングで、縁あって起業に参画しました。その後自分で新しく会社を立ち上げて今に至るという経歴です。

なるべく客観的にお話したいのですが、私自身は上場企業からインターネット業界に転職した人間なので、根本的にはベンチャー企業への転職を薦める気持ちを持っています。

今から、ベンチャー企業に転職しようか悩んでいる人向けにお話ししていきたいと思います。新卒で2~3年目の人をイメージしていますので、以下の目次を見て、必要無いと思われる箇所は飛ばして下さい。

1、そもそもベンチャー企業とは? スタートアップとの違いは?

最近よく「スタートアップ」という単語を耳にしませんか?

スタートアップとは、本当に実現できるかどうか誰にもわからないようなビジネスモデルを形にして、たくさんの資本を集めて、一気にシェアを取り、急成長する会社のことを指します。設立から数年で、時価総額1,000億円で上場する、というようなイメージです。具体的にはウーバーやメルカリのような企業のことを指します。

ベンチャーとはもっと幅が広く、リスクを負って新しいビジネスに挑戦する企業全般を意味します。

あなたがベンチャー企業に転職を考えるのは、大手で歯車として働くのでは無く、これから伸びていく会社で自分の力を試してみたい、というのが動機では無いでしょうか。

2、ベンチャーに転職するときに最も大切なことは何か

一番大事なことを先に言ってしまいます。

あなたが考えなければならない最も大切なことは、「自分が本当は何をしたいのか」ということです。
自分の心に正直になってください。
楽をしたいのか、安定したいのか、人脈を広げたいのか、手に職を付けたいのか、将来独立したいのか、起業したいのか。
最悪なのは、自分の本心に気がつかず違うことをしてしまうことです。
まずはここで、人に言わなくてもいいので、自分を見つめ直してみましょう。

お金が欲しいと思っている人は、お金を得た後、何をするのでしょうか?
「手段が目的になってはいけない」と良くいいますが、本当はお金を得て、何かをしたいはずなのです。
お金持ちになった後、旅行したいとか、車を買いたいとか、毎日安心して生活したいとか、ご両親に親孝行したいとか、その先があるはずです。

つまり、本当にあなたがやりたいことはなんなのか、これを突き詰めて考えて知ることが、何よりも一番大切なことなのです。
就職活動の時によく聞かれてうんざりしたでしょうが、この問いは残念ながら一生続きます。

私の場合は、「社会の役に立ちたい」です。
以前はそんな風には思えませんでしたが、生きていくうちにたくさんの人にお世話になって、恩を感じることが増えました。
直接その恩を返せれば良いのですが、返せない恩もあります。それは他の人、次の世代に返していかなければならないと考えています。
ではどのようにして役に立つのかですが、紆余曲折あって、今は会社経営をしているわけですから、「お客様に喜んでもらう、社員にこの会社で働いて良かったと思ってもらう、雇用を増やすことで社会の役に立ちたい」と、ごく自然に思います。

とはいえ、なかなか自分のやりたいことはみつからないものですよね。
みつかるまで動かないというわけにもいきません。
現実問題として転職するならば、不安もあれば、リスクもあります。
給料はどうなるのか、勤務時間や福利厚生なども気になるところです。

3、ベンチャー企業に転職する場合の不安・リスク

まずはベンチャー企業に転職する場合の不安・リスクについて考えてみましょう。
以下箇条書きにしていきます。

・倒産してしまうのでは無いか

「社員が自分の会社が倒産したことをニュースで知った」とか、「当日の朝突然発表された」などという話を聞いたことがあるかもしれません。

【コラム】倒産
実は会社というのは倒産なんてしません。正確には清算と言います。
巷で倒産と言われているのは、「企業が債務を払えなくなったという状態」のことを言うのです。
仕入代金が払えない⇒払うための現金が無い⇒仕方ないので仕入代金を減額してもらう、もしくは会社にある売れる物を売って現金を作って払う⇒最後会社にある物を全部売っても払えなくなる。
この時点で社員はみんな辞めてしまします。

請求されているお金が払えなくても、銀行が貸してくれたり、投資家が出資してくれたら払えます。そのためには会社に社員がいて、これからまだ伸びると思ってもらわなければなりません。
だから、経営者は最後まで社員に倒産すると言わないのです。これは騙しているわけでは無く、口に出したときが倒産する時なのです。

もし倒産すれば社員にどんな被害があるのでしょうか。実はなにもありません。未払の給料を受け取れないという実被害は、他の債権よりも一番優先的に守られます。転職までの生活費に困るかというと、失業保険があります。冷静に考えれば、実力のある人にとっては、倒産はリスクでも何でもありません。

このことを理解した上で、ベンチャーが倒産するリスクを想定しようと思うのならば、その会社の財務諸表を見せてもらうのも1つの手です。
本当は、上場していなくても、企業は貸借対照表を(あなたにでは無く世間に)公開する義務があります。ほとんどの会社は公開していませんが、必ず作成はしています。
売上などの数字を社員と共有しないという会社もあるので、あなたには見せられないと言われるかもしれません。
その場合は、黒字かどうかを確認してみてください。
そんなこと聞いて良いのか? と遠慮する人がいますが、なんのために聞くのかが明確で、聞き方が間違っていなければ、もちろん大丈夫です。

しかし、赤字でも優良なベンチャー企業は数多くあります。
その場合は、直近の増資情報などを調べると良いでしょう。
増資をすれば(投資家からお金を投資してもらえば)、プレスリリースという形で公表することが多いので、少し調べれば「○○会社が○億円増資しました」という情報を得ることが出来ます。
その会社の規模を考えて、多額の増資を受けていたならば、まだ現金がその会社に残っているので、すぐに倒産することは無いだろうと考えることが出来ます。

【コラム】黒字
黒字と簡単に言いますが、黒字とはなんでしょうか。
1個1万円で10個仕入れた商品が、今月1個10万円で売れて、月の全費用が9万円でした。それは黒字なのでしょうか?

①売上10万円、仕入10万円、費用9万円で赤字なのでしょうか?

②会計上はこう考えます。
売上10万円、月初在庫0円、今月仕入10万円、月末在庫9万円、原価1万円、粗利9万円、費用9万円で単月黒字。

③でも会計上が黒字だからと言って本当に安心出来るでしょうか。
なぜなら、たまたま1つは10万円で売れましたが、10個仕入れた残りの9個が、全く売れずに腐ってしまったり、置き場所にコストがかかるようならば、結局は①に戻るのです。

そして、残りの9個が売れるか否かは、売れるまで誰にもわからないのです!
つまり、経営者が売れるといえば(今は)黒字になるし、売れなければ赤字になるということなのです。
面白くないですか?
京セラの稲森さんはもっと本質的なことを仰っています。

・教えてくれる人がいないので成長出来ないのでは無いか

「大手企業では自分より優れた上司が数多くいたので、その人を手本にしたり、その人に教えてもらったりして成長することが出来たのだが、ベンチャーにはそれほど人材が揃っておらず、全て自分で勉強しなければならない」という場合があります。
教えてもらった方が早い場合や、教えてもらわなければわからないこともあるので、上司の能力が高いかどうかというのは、重要な要素です。
この点は入社前に必ず確認しなければならないポイントです。
しかし、究極的には、自分で勉強して成長出来る人こそがベンチャーでは求められています。

・入ってからどんな仕事をするのかよくわからない

こう考える人は、仕事は与えられるものだと考えているのではないでしょうか。
ベンチャー企業では、自ら動いて問題を解決できる人が多いので、あれこれ言われません。
つまり、どんな仕事をするのかは自分次第と言えるのです。

・人数が少ないので社風に合わないのでは無いか

人数が少ないと社風というものが生まれやすいでしょうし、それに合うかどうかは大切です。営業会社で体育会系なのか、技術先行型の会社でギークが多いのか、こればかりはなるべく多くの社員に会って話を聞いてみるしかありません。
面接時に「社員の方とお話しさせてください」と頼めば、普通の会社ならば喜んで社員を紹介してくれると思います。

・研修制度など整っているのだろうか

大手と比べると、こういう制度は整っていないこと場合が多いでしょう。
しかし、その分、自由にセミナーに参加する権限がある会社は多いですし、改善して研修制度をゼロから作り出すことも可能だと言えます。

・入社後のキャリアステップが不明瞭だ

大手企業ならば参考にするキャリアステップがあるのですが、ベンチャーにはありません。
しかし、例えばインターネット企業の場合、インターネットが出来てからまだ20年くらいですから、参考になる上司はいるはずもありません。
キャリアは自分で作っていく、それくらいの気構えを持った人の方がベンチャーには向いているといえます。

・給料体系も不明瞭だ

このリスクは一番高いかもしれません。
そこで、次はベンチャー企業に転職する場合の給料についてみていきましょう。

4、ベンチャー企業に転職する場合の給料

一昔前までは、リスクを負って給料が下がるが、その分やりたいことが出来るし、会社が大きくなれば給料も増える、というパターンが多かったのですが、今ではベンチャーの方が大手より高給という場合も多々あるので、給料が下がるとは限りません。
給料のことを考える際に、以下のことについて理解しなければなりません。
(ア)福利厚生
(イ)年金
(ウ)ストックオプション
基礎的な部分はコラムで記載しましたので、知っている人は読み飛ばしてください。

(ア) 福利厚生

面接で福利厚生を気にする人がいるのですが、そもそも福利厚生というのは具体的になんでしょうか?
ジムに安く行ける仕組みがあるとか、保養所やホテルを安く予約できる制度があるとかでしょうか。実際そんな制度があったとして、本当に使うのでしょうか?
昔は、大手企業はそういう制度や資産を持っていたようですが、最近は誰も使わないので、どんどん無くなったり、アウトソースされたりしています。

福利厚生が気になるならば、もう少し具体的に自分に関係のある内容について確認した方が良いでしょう。
例えば、「育児休暇の制度があるのか無いのか、実際に子供が生まれた時に、ある程度の実力があるという前提で、最大何日休ませてもらえるのか」を聞くのはどうでしょうか。
「これはすぐに子供が生まれるから聞きたいのでは無く、御社のスタンスを知るために質問させて頂いています」と言えば、その会社の多くの情報を得られるのではないかと思います。

(イ) 年金

また、年金について気にされる人も多いです。

【コラム】年金
ざっくりとですが、年金には2種類有ると考えてください。
「私的年金」と「公的年金」に分けましょう。
私的年金というのは、あなたが毎月毎月いくらかを積み立てて、その支払ったお金を運用してもらって(債券や株などを買って代わりに投資をしてもらって)、将来運用益や利息と共に返してもらう制度です。
公的年金というのは、国民年金や厚生年金のことで、あなたが払ったお金がどこかに保存されて将来返ってくるものでは無く、あなたが払ったお金は、その時のお年寄り、受給者に払われてしまっています。
つまり、あなたが毎月1万円払ったから、将来毎月1万円以上受け取れるという制度では無いのです。
たまに、自分が払った金額が将来戻ってこないから払っても無駄だという人がいるのですが、そんなことはありません。
将来自分がお年寄りになったときに、その時代の若い人から、生活費を受け取る権利を買っていると言えるからです。

ベンチャー企業の年金制度について確認しましょう。
普通は厚生年金には必ず加入しています。
厚生年金に加入できないという場合、問題ですから、理由を聞かなければなりません。
もしかすると、3ヶ月の試用期間後に入れるとか、会社によっては様々だと思います。

実は年金で一番大事なのは、企業年金があるかどうかです。
大手の企業では、厚生年金の他に独自の企業年金を用意していることがあります。
よく巷で3階建てと言われる部分です。
結局、親が子供に大手企業で働いて欲しいと願うのは、生涯賃金が大手の方が格段に多いからなのです。
毎月の月収で考えると大差が無いようでも、年金や退職金なども含めた場合、全く変わってくるのです。

(ウ) ストックオプション

ベンチャーで働いてストックオプションをもらって儲けたい!
こう考えている人も多いのではないでしょうか。
実際、「メルカリでは6億円以上稼いだ人が35人以上いる?」とか、「グリーの上場では1億円以上稼いだ人が100人以上いる?」なんて言う話を聞けば、僕も!私も!と思うのは当然だと思います。

【コラム】ストックオプション
ストックオプションとは、権利のことです。
① 株を安く買う権利を付与してもらう。
② 権利を行使する。安く買う権利を行使して、株を買います。
③ 株を売る。権利を行使して買った株を、時価で売ります。

株を例えば100円という金額で安く買える権利を持っているわけですから、株価が上がれば上がるほど、儲かりますよね。
もし株価がどんどん上がって1万円になっても、あなたは100円で買える権利があるわけですから、権利を行使して100円で買って、1万円で売れば良いわけです。
そのために、頑張って会社の株の金額を上げましょう!という業績連動型の報酬なのです。
会社からすると、権利を付与しただけで、現金を払わなくて済みますし、社員のモチベーションが上がって業績を上げようと努力してくれるので、社員も会社もどちらにとってもメリットがある、というのが全体像です。

ストックオプションというのは株を安く買える権利ですから、この権利がたくさんあると、株数が増えてしまいます。
株数が増えると一株あたりの金額は安くなってしまいます。
上場してから株数が増えてしまって、一株あたりの株価が低くなってしまうと困るので、一般的には10%くらいに押さえるのが慣習となっています。

そして、ストックオプションはコアメンバーを採用するために使われます。
あなたの価値がナンバー2で貢献度が大きければ、全部で10%のストックオプションを全部もらえるかもしれません。
細かい話を抜きにすると、会社の時価総額の10%がもらえる可能性があるということです。
あなたの会社が時価総額100億円で上場すれば10億円手に入るという計算になります。

ここで多くの人が「もし上場すれば○%だから○○円だ」とか、「あの人は○%持っているのに、私は〇%しかない、実力は私の方が上なのにおかしい」とか、捕らぬ狸の皮算用をするのですが、全く意味がありません。
なぜなら、そもそも、ストックオプションというのは、基本的には会社が上場しなければなんの価値もないものだからです。
また、○%という数字にも特に意味はありません。
10%持っていても、時価総額が10億円なら1億円、メルカリの時価総額は上場時7000億円ですから、0.014%しか持っていなくても同じ1億円だからです。

つまり、小さいパイを奪い合うのではなく、パイその物を大きくしなければならないのです。
どうすれば圧倒的に世の中に受け入れられる新しいサービスを創り出せるか。
これこそがベンチャーに求められていることで、追求しなければならない課題なのです。

【コラム】ベンチャーキャピタル
ベンチャーキャピタルという単語を聞いたことがあるかもしれません。
VCと言ったりするのですが、彼らはこれから伸びていきそうな会社に投資をするのが仕事です。
VCが投資をするための原資は、自分で貯めたお金を出したりもするのですが、基本的には銀行から出資を受けたり、商社やメーカーなどの事業会社から出してもらったりして集めます。
どうして銀行や事業会社は自分で投資をしないのかというと、ベンチャーキャピタルで働いている人の方がたくさん情報を持っていて、ビジネスモデルを判断する能力が高いと考えているからです。

私も日本でも最高のベンチャーキャピタルの方々に出資をして頂いていますが、とてもお世話になっています。
(出資して頂いた一番の理由は、会社を公的な存在にしたかったからです)
起業する前は、ちょっと怪しいなとか、搾取する側だろうと考えて、良いイメージは無かったのですが、そんなことはありませんでした。
VCだけでなく、銀行も、お金を扱う人々というのは、非常に合理的です。
「頼むから貸して下さい」と土下座をしても、お金を返してもらえそうになければ、貸せないのは当然です。
銀行もVCもボランティアや人助けをしているわけでは無いからです。
結果を出す人には投資も融資もしますが、結果を出せない人にはお金は出せませんと言っているだけなのです。

5、ベンチャー企業に転職する場合の勤務時間

これは、会社や人によりますので、一概には言えません。
1つ言えることは、実力のある人は時間も自由になる場合が多いと思います。
お客様がいれば話は別ですが、特にベンチャーの場合、場所や時間に縛られない会社が多いのではないでしょうか。

勤務時間がフレックスの場合や、自宅やシェアオフィスで働ける場合も多いと思います。
そういった働き方を重要視している人は、ベンチャー企業への転職は魅力的なものになるでしょう。

しかし、ベンチャーに限らず世の中は、実力のある人に限って人より努力しますので、そこを誤解してはなりません。

6、ベンチャー企業に転職する場合のメリット

今までベンチャーに転職する場合の不安や給料、時間などについて見て来ましたが、一体全体ベンチャーに転職するメリットはなんなのでしょうか。

自分が自分の意志で方向を決められること、生きているという実感を得られることではないでしょうか。
例えば自分で育てた作物や、自分で料理をしたご飯の方が、コンビニで売られている食べ物よりも美味しいと感じられるでしょう。
自分で計画して予約をして苦労して行った場所の方が、ツアーに参加した旅行よりも心に残るでしょう。

それと同じで、他の人がやっても特に変わらない仕事をこのまま一生やり続けるよりも、自分の行動がそのまま結果に結びつく場所で働いた方が、やりがいがあるのではないでしょうか。

チームで結果を出して、それに対して自分がどれだけ貢献したかが目に見える。
その経験が自分の成長となり、評判が上がって、更に大きなことが出来るようになる。
もちろん、それに伴ってお金も時間も自由になる。

これがベンチャーで働くメリットだと思います。

7、ベンチャー企業に向いている人

「自分の責任だと考えることの出来る人」です。

「給料が低いのも、上司がバカなのも、全て自分次第、せっかく生まれてきたのだから、言い訳せずに結果を出した方が楽しい」と考える人の方が向いています。

8、ベンチャー企業が求めている人

「前向きな人」です。

ベンチャーは挑戦の連続ですから、後ろ向きなことや否定的なことを言っても始まりません。
前向きで明るい人というのは、それだけで場を和ませますし、雰囲気を良くします。
雰囲気というのは非常に大切です。
みなさんも、なんとなく雰囲気で決めていることがたくさんあると思います。

9、ベンチャー企業に転職して成功するパターン

「コツコツ諦めず向上心のある人」は、他では得られないチャンスを得て、化けることが出来ます。

ベンチャーは、めまぐるしく動いたり、派手なイメージを持っている人もいるかもしれませんが、実は地味です。
例えばサイト制作などは、本当に地味な作業です。

10、ベンチャー企業に転職するデメリット

あなたの人生で最も大切な物は、お金なんかではありません。「時間」です。

ベンチャーに転職するデメリットは少ないと思いますが、転職して、今よりも無駄な時間を費やすことは、避けた方が良いです。

11、ベンチャー企業に向いていない人

「視座が低い人」は向いていません。

「自分はこんなに頑張っていて給料も低いのに、どうしてあの人はあんなにもらっているのに使えないんだ」という不満は、そもそも見てるところが間違っているのではないでしょうか。

小さい世界であれこれ考えていても意味がありません。
内をみるのでは無く、外を見て、「私の市場価値はどれくらいなんだろう」、「今他の会社に転職したらどう評価されるのだろう」と考える方が、生産的ではないでしょうか。

12、ベンチャー企業に転職して失敗するパターン

成功するパターンは一概には言えないのですが、失敗するパターンは決まっています。

「自分は学歴が高いから能力があるんだ」「私は前職が大手だから価値があるんだ」と過信して、変化せずに今まで通りの働き方を続けようとすると、上手く行きません。

「自分の実力が無いことを知りたい、そしてそこをスタートラインにして這い上がりたい」と考えて、謙虚に貪欲に吸収する方が良いと思います。

13、どんなベンチャーに転職すべきか

リスクとリターンは反比例の関係にあります。
設立間もない会社に入れば、リターンも大きいでしょうが、リスクも大きいでしょう。
上場間近の会社に入れば、リスクは少ないでしょうが、リターンも少ないでしょう。

個人的には、調達金額が少なく、設立3~5年目の黒字の企業で、これから上場を目指すような会社が良いのでは無いかと思います。

【コラム】資本金
資本金と 調達金額は違います。
資本金を調達金額より少なくしている会社はたくさんあります。
まれに資本金は大きければ大きいほど良いと考えている人がいますが、むしろ逆です。

100億円現金があるのに、年間利益が1億円だとしたら、銀行に預けて利息をもらった方が良いということになります。
1億円しか現金が無いのに、年間利益が1億円だとしたら、それは銀行に100万円預けたら、1年で利子100万円受け取れるのと同じことになります。

少ないお金で黒字になっているということは、コンパクトで筋肉質な会社ということですし、これから進んでいく方向も、素早く変更することが出来ます。

逆に避けた方が良いのは、何度も増資をしていて、人が溢れている会社です。
カオスのような状況をまとめ上げるのも面白いかもしれませんが、多額の出資を受けてしまっていると、株主の意向を無視して一社員が会社の舵取りをしていくのは難しいでしょう。

これから伸ばしていくために、あなたの力が求められていて、あなたの力が最も発揮できる会社を探すのが良いと思います。

14、転職をするべきか、するべきでないか、最後の判断基準は何か

転職が「逃げか否か」で決めれば良いのでは無いでしょうか。
転職する際に、今よりも楽になるためだと考える人はやめた方が良いです。
今より苦しいことにチャレンジする、という選択ならば、周りの人も応援してくれると思います。

15、転職ではなく、起業という選択肢

転職と起業の最も大きな違いは、お金を用意できるかどうかです。
転職の場合、資本金を用意しなくて済みますが、起業の場合、事業を興すための資金を自分で用意しなければなりません。
資金は、政策金融公庫などから担保無しで借りることもできますし、投資家を見つけることが出来れば、返済義務無しで用意できるかもしれません。

16、ベンチャー企業の面接で成功するためのテクニック

みなさんは転職先をどのようにして選ばれているでしょうか。
「リ○ナ○」とか、「マ○ナ○」とか、「G○e○n」とか、「W○n○e○ly」などで、良さそうなところを見つけるのでしょうか?
この時点で、ベンチャー企業に転職するのは考え直した方が良いかもしれません。
百歩譲って、色々な会社を探すために転職サイトを使っても、応募は直接した方が良いでしょう。

ベンチャー企業は常に人材を探しています。
来年2倍、少なくとも1.5倍になっていなければベンチャーとは言えないのですから、良い人がいれば即採用のはずです。
つまり、採用していようがしていまいが、思い立ったらその日に応募するような人の方が、ベンチャーには向いています。
転職サイトを通じて応募する人は、その時点で、時間の進み方がゆっくりした人だなという評価になります。

また、転職サイトを通じて採用すれば、紹介料などがかかるわけですから、内定を前提に考えた場合、あなたの会社が余計なコストを払うことになるのです。

17、まとめ

自分が新卒または社会人2~3年目だったら、インターネットと商売の基本を学べるところに入ります。

インターネットは世界を変えています。
みなさんは今、幕末時代にいるようなものです。
社会が大きく変革していこうとしている時代のまっただ中にいるのですから、維新の志士達と一緒になにか自分の出来ることをしなければ、もったいないと思いませんか?

商売の基本は若い頃に学んだ方が良いです。
私が社会人2~3年目の時は、雑誌を作っていたのですが、雑誌の売上げのことなど真剣に考えていませんでした。
「何冊売って、どれくらい広告収入を得て、そのお金の範囲内でページを作っていく」という今では当たり前の発想が、1㎜も無かったのです。
与えられた予算の中で良いページを作ることしか考えていませんでした。
それはそれでありがたい環境なのですが、目の前の人に自分が作った何かを読んでもらって報酬を得るという原体験や意識が欠けていたなと反省しています。

どんな大きな会社も、お客様が払ってくれたお金で存続出来るわけですから、そのことを体験するべきだと思うのです。

株式会社retroでは、バイヤーが、一般のお客様から商品を買い取って、その買い取った商品をまた別のお客様に販売します。
非常に原始的な商売を、実際にお客様と顔をつきあわせて行うわけです。
これが出来る人は強いと思います。
どんな大きな仕事も、最後は人と人が行うものだからです。

バイヤーの経験を積み、インターネットの知識を蓄積することが出来れば、新しいサービスを創り出すための経験と能力が身につきます。

もし自分が10年選手だったらどうするだろうかということも、考えてみました。

自分に実績があれば、転職活動はしない気がします。
実績があれば、何もしなくても周りから誘われるはずだからです。

実績が無く、これから伸びそうな所に転職しようとすると、失敗すると思います。
私は株式投資で確実に上がる会社を選ぶ能力は無いので、未上場の会社の中でこれから伸びていきそうな会社を選ぶ能力も無いと推測できるからです。

結局、私ならば、これから伸びそうな所よりも、自分で伸ばせそうな所に転職します。

最後は宣伝も入ってしまいましたが、なるべく客観的に書いたつもりです。
この文章が皆さんの将来に少しでも役に立てば幸いです。

ご意見やご質問を受け付けていますので、遠慮無くご連絡ください。

参考文献

未来をつくる起業家 vol.2
メルカリ 希代のスタートアップ、野心と焦りと挑戦の5年間
Hacking Growth グロースハック完全読本
エンジェル投資家 リスクを大胆に取り巨額のリターンを得る人は何を見抜くのか
UPSTARTS
MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣
未来をつくる起業家
HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか
ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか
Yコンビネーター
GILT