ベンチャー企業経営者の視点から、株式、ストックオプション、従業員持株会について考えてみた【後編】
第2回目は、サラリーマン向けです。
前編はこちら
・上場企業サラリーマン向け
・ベンチャー企業サラリーマン向け
に分けて書いていきたいと思います。
まずは上場企業から。
自分の会社の株を買いたければ、証券会社に行って買えば良いですね。
ストックオプションは、自社で発行されていれば検討しましょう。
・普通のストックオプション
・株式報酬型ストックオプション
・有償ストックオプション
どのSOが発行されるのかはその会社次第なので、発行されたときに検討してください。
転職の際には、志望している企業がどのタイプのSOをどういう意図で発行しているのかを調べるのも良いと思います。
https://industry-co-creation.com/management/32081
上場企業のストックオプションの価値はある程度正確に計算することが出来ますので、ほとんどボーナスと同じです。
簡単なのですぐ終わって、次はベンチャー企業のサラリーマン向けに書いていきます。
「自分が働いた分、お金が欲しい」とか、「金持ち父さんに書いてあるようにESからBIに進みたい」という発想から、株やストックオプションに興味を持つ人は多いのではないでしょうか。
まず、未上場の会社の、「普通株」について見ていきましょう。
例えば、皆さんがある会社に入ったとします。
「株を持ちますか?」と聞かれたら、いくらで買いますか??
果たしてその会社の株は、いくらの価値があるのでしょうか?
そして、その株は、いつ誰に売ることが出来るのでしょうか?
設立時に、3人で会社を始めて、300万円ずつ出して始めよう、ということになれば、33%を持つということになるでしょう。
しかし設立後しばらくたってからジョインする場合、その会社が増資を受けていれば、基本的に直近増資価格になるので、実態より上がってしまっています。
例えば設立時には1株5万円だったのが、1年後には1株15万円とかになっていて、「同僚が5万円で手に入れたものに、15万円出せるのだろうか」というふうに考えてしまう人もいるでしょう。
もし皆さんが「株を持ちますか?」と聞かれたら、
その会社の価値はいくらくらいかなと見積もってください。
そして、その会社の全部の株のうちの何%を買うか計算してください。
1億円の価値があると見積もった会社の1%分の株を買うなら、100万円出しましょう。
こう考えたとき、皆さんが働いている会社から「株を持ちますか?」と聞かれたとして、実際に買うのかというと、「やっぱりお金がありません」とか、「どうせ買うなら上場企業の株を買います」ということになることが多いのではないでしょうか。
それでも果敢に株を買ったと仮定しましょう。
最も問題となるのは、売る時です。
株を買って、捕らぬ狸の皮算用をする人がいますが、一番難しいのは、誰にいついくらで売るのかということです。
未上場の株は、自由に売れません。
ほぼ必ず譲渡制限というものがついていて、取締役会の承認が無ければ売れないのです。
上場するか、会社が買収されなければ、売れないということになります。
にもかかわらず、辞めるから株を買ってくれと言う人がいますが、結論はどちらかです。
1、株を買ってもらう
金額は、出した金額か、純資産ベースになるでしょう。もしかすると、もっと高い金額で買ってもらえるかもしれませんし、もっと低い金額でしか売れないかもしれません。その時の会社の状況によります。
2、株を持ち続ける
買えないと言われたら、持ち続けるしかありません。
上場して無くて、買収もされていなければ、基本的に株は売れないものなので、出したお金は返ってこないと思った方が良いです。
皆さんの会社は、上場出来るか、買収されそうでしょうか。
次に未上場の会社の、「ストックオプション」について考えて見ましょう。
会社に現金がない場合でも、業績連動型の報酬を手にすることが出来るかもしれません。
教科書的な解説をすると、
1、権利の付与日(Grant)
2、権利の行使日(Exercise)
3、株の売却時(Sale)
という3つのタイミングがあります。
・権利の付与日に、時価が1株1,000円の時に、100円で10株買う権利をもらいます。
・権利の行使日に、時価が1株2,000円の時に、100円で10株買います。
・株の売却時に、時価が1株3,000円の時に、持っていた10株を売ります。
そうすると、100円で10株、1,000円で買った株を、3,000円で10株、30,000円で売ることになり、29,000円儲かるという仕組みです。
しかし、本で勉強しただけの人は、いくつかの誤解をしています。
1、権利の行使日というのは、株を買うというタイミング
株を買うということは、お金を出すということになります。
上記の例では1000円ですが、もし100万円だった場合、そんな大金を、皆さんはどういうつもりで払うでしょうか。
確実に儲かるので無ければ払いませんよね。
皆さんの会社はすぐに上場出来るでしょうか。
2、誰にも売れないことが多い
上記の例では値上がりした株をすんなりと「誰か」に売っていますが、誰に売るのでしょうか。
未上場の株を売り買いするためには、普通は取締役会の許可が必要です。上場して初めて、自由に誰かに売ることが出来るのです。
3、計画通り株価が上がるかわからない
上記の例で、もし皆さんの会社の株の時価が、3000円まで上がらず、50円になってしまったら、皆さんは500円損するだけで無く(100円で10株買って、50円で10株売るから)、1000円損をします。
なぜなら、誰も買ってくれないからです。上場会社の株ならば50円で売れるので500円損ですむでしょう。倒産直前でも1円で売れたりします。そこが上場株の良いところです。
4、オプションを持っているということと、株を持っているということは違う
オプションは無償でもらえることもあるので、オプションだけくれれば良いんだ、と言う人がいますが、株を買って売って初めて儲かるので、オプションだけもらっても、まだまだ先は遠いです。
何が言いたいかというと、ストックオプションは、上場しなければ意味がないということです。
上場しなければ意味の無い、ダイヤか石ころかわからないものなので、それを餌に騙されないように注意してください。
伸ばした分評価されて、報酬をたくさんもらえるというベースがあって、あくまでも追加で得られる選択肢に過ぎないので、そこを誤解しないようにして頂ければと思います。
会社が買収された時に、「儲かるのは社長だけじゃ無いか、俺たちは売られたのか」と言う人がいますが、実は儲かった社長は、貢献してくれた人にはちゃんと還元しています。
(上場した場合は、社長は、株はほとんど売れません。社長が株を手放してしまうような会社は、社長自ら伸びていかないと宣言することになるからです)
還元しなければ、次から誰も着いてきてくれないからです。
どうやって還元しているのかというと、現金をそのままあげてしまうと税金が高いので、会社を設立してあげるわけです。
例えば、900万出してもらって、皆さんは100万円出して、会社を設立しました。何%渡さなければなりませんか?
普通は90%ですよね?
でも、30%で良いよ、と言ってくれるのです。
その時、皆さんは会社の経費を900万円分好きなだけ使って、会社を清算しても構いません。
でも、皆さんはその社長と一緒に事業を構築し、少なくとも事業売却までは行きました。
その経験を生かして、自分でサービスや事業や会社を創り出すことが出来るはずです。
そうしたら900万円どころか、もっと未来は広がります。
万が一、その社長が吝嗇で何も出してくれなかったとしても、皆さんには事業を伸ばした経験があります。
その経験は、どこに行っても通用する経験ですし、お金がなくなっても失わない武器になります。
「スタートアップでSOもらって1億円ゲット」というのは、「3年後100億で上場するのがほぼ間違いないので、その準備のために今年収1500万もらってるかもしれないけれど、800万でお願いします、その代わりに株を1%渡すので、計画通りに上場出来れば1億円ボーナス受け取れます」という話です。
そうで無いのならば、事業を創る、サービスを伸ばすという実績や経験こそが、何よりも重要ではないでしょうか。
ちなみにretroでは、ストックオプションを発行することも社員持株会を作ることも、全て可能です。
資本政策は上手くいっているので、様々な選択肢があります。
そういった制度設計に興味のある方は、是非一度お話しさせて頂ければと思います。