銀行融資のため、マネーフォワード会計(MF会計)で、資金繰り表を作る方法
資金繰り表について
銀行から融資を受ける際、必ず「資金繰り表」の提出を求められます。
PLとBSは作っていても、「資金繰り表」は作成していないという人も多いのではないでしょうか。
キャッシュフロー計算書で充分ではないかと思うのですが、残念ながら、将来の動きは出てきません。
会社が倒産するのは、現金が払えなくなった時なので、倒産しないように、将来の現金の動きを把握している会社にのみ、銀行は融資をしてくれます。
マネーフォワード会計(MF会計)とfreeeについて
実は、freeeでは資金繰り表を出せるそうなのですが、マネーフォワード会計(MF会計)では出せません。
そこで、マネーフォワード会計(MF会計)で「資金繰り表」を作成する方法について、具体的に説明していきます。
記事作成者について
私は株式会社retroの代表取締役で、増資や融資は私が担当しています。
米国公認会計士の資格を持っています。
5,000万~1億円の融資を検討している方向けの記事となります。
融資の相談も受け付けています。
作成の前に
「資金繰り表の作り方」という記事やYouTube動画は、星の数ほどあります。
それをいきなり見て、その通りに進めてしまうと、ほとんど無駄な作業になってしまいます。
私は、資金繰り表のフォーマットがたくさんあってどれが良いのかわからず、あまり意味の無い細かい資金繰り表を作成していました。
銀行融資のためだけの資金繰り表を作成していたのです。
経営の役に立たなければ、意味がありません。
そこで、重要なポイントを上げておきます。
1、 発生主義の売上、仕入と、現金主義の売上、仕入が記載されている
2、 現金残高の数字が合っている
3、 銀行借入について、数字が全て正確に記載されている(経常支出で最も重要なのは、支払利息で、あとは残高で充分)
最後に私がオススメするフォーマットをアップロードしておきますので、よろしければダウンロードしてください。
具体的な作成方法
1、まずは総勘定元帳のcsvを用意しましょう
マネーフォワード会計(MF会計)にログインする
①左ナビ「会計帳簿」
②上部タブ「旧形式」と「新形式β」があるが、旧形式でOK
③勘定科目「普通預金」
④開始日と終了日を入力
⑤消費税は税込に!
⑥検索
⑦エクスポートでcsv出力
⑧現金と普通預金をチェック
⑨「出力する」をクリック
すると、「総勘定元帳」のcsvがダウンロード出来るようになりますので、ダウンロードして、エクセル形式に変えて、保存します。
2、続いて、「総勘定元帳」のエクセルで、作業を進めていきます。
2-1、分類を追加
N列「借方金額」O列「貸方金額」と、P列残高の間に「分類」という列を挿入
分類に、以下のいずれかを入力していきます。
100番台は経常収入
200番台は経常支出
300番台は財務収入
400番台は財務支出
です。この分類は、最終的に作成する資金繰り表のフォーマットに合わせます。
100_売掛金回収 |
190_その他経常収入 |
200_買掛金支払 |
210_人件費 |
220_支払利息 |
230_販管費 |
290_その他経常支出 |
310_短期借入金 |
320_長期借入金 |
330_増資 |
410_○○銀行保証協会 |
421_○○銀行プロパー |
422_○○銀行社債 |
430_政策金融公庫 |
全選択して、ヘッダーの「並び替えとフィルター」から、「フィルター」を選択し、フィルターを追加する。
C列勘定科目は「現金」と「普通預金」をチェック
H列相手勘定科目も「現金」と「普通預金」をチェック
貸方と借方が同額なのをsum合計で確認して、全て削除する。
(資金移動は現金残高に影響を与えないので、削除してしまう)
全ての仕訳を分類していく
H列「相手勘定」が、売上、売掛、売上値引、諸口をフィルタで抽出し、先程作ったP列「分類」の欄に、「100_売掛金回収」と入力。
(諸口は売掛金回収とは限らないので、後で処理をする)
同じように、雑収入、未収入金、受取利息、為替差益をフィルタで抽出し、「190_その他経常収入」と入力。
このように、全ての相手勘定を埋めていくのだが、この部分は会社によって異なるので、あくまでも一例を記載していく。
重要なのは、ここの分類は、最終的に作成する資金繰り表の分類と合わせること。
100_売上は、相手勘定が、売上、売掛、売上値引、諸口(諸口は注意)
190_その他経常収入は、雑収入、未収入金、受取利息、為替差益
200_仕入支出は、仕入、仕入値引、買掛、諸口
210_人件費は、「仮払、未払、諸口」のうちの、相手補助科目「給与、労働保険、社会保険」
220_支払利息は、支払利息
230_販管費は、荷造運賃、会議費、外注費、支払手数料、支払報酬、事務用品費、消耗品費、接待交際費、長期前払費用、販売促進費、備品・消耗品費、福利厚生費、未払金、旅費交通費、租税公課
290_その他経常支出は、預り金、未払法人税等、未払配当金、未収還付法人税等、預け金、国税還付金、諸口
300_借入金収入は、長期借入金の、入金のものだけ
400_○○借入金返済は、長期借入金と、諸口の、返済。社債は諸口。
2-2、ピボットテーブルを作成
全選択し、ヘッダー挿入から、ピボットテーブルを作成。
取引日、借方金額、貸方金額、分類にチェックを入れる
日(取引日)と取引日のチェックを外す
ピポットテーブルは、差額を計算できないので、
ピポットテーブルのどこかをクリックして、上部タブのピポットテーブル分析の中の「フィールド/アイテム/セット」ボタンをクリックして「集計フィールド」を選ぶ
すると「集計フィールドの挿入」ダイアログボックスが現れるので、「名前」ボックスの「フィールド1」を削除して「差額」と入力する。
続いて、「数式」ボックスの「= 0」から「0」を削除して「=」のみを表示し、「フィールド」ボックスから「借方金額」を選んで「フィールドの挿入」ボタンをクリックする。すると「数式」ボックスには「=金額」と表示される。
マイナスを入力して、
「フィールド」ボックスから「貸方金額」を選んで「フィールドの挿入」ボタンをクリックする。
3、BSの現金残高と、ピポットテーブルの数字がが、合致しているかを確認する。
4、作成したピポットテーブルの数字を、資金繰り表に転記する。
資金繰り表の注意点
冒頭で、資金繰り表のポイントを3つあげましたが、もう少し具体的に注意点を記載しておきます。
1、PLの数字を転記する。PLの数字は発生主義なので、売上が入金されるタイミングと、仕入を支払うタイミングがずれます。
つまり、PLの4月分の売上が6月に入金されるなら、そのずれを記載します。
2、経常支出を細かく分けて、例えば法人税の支払いなどを別項目にした方が、税金の支払いタイミングも把握しているということになりますが、あまり細かく分けると大変なので、柔軟に対応してください。
ただ、後で説明しますが、支払利息は正確に算出した方が良いと思います。
3、財務収支の欄に、借入予定を書く。
短期というのは1年以内というよりも、当座貸越のことです。長期というのは、証書貸付を記載します。
増資は政策金融公庫によるとその他経常収入とのことですが、こちらに書いた方がわかりやすいと思います。
4、財務支出の欄に、借入金の返済を書く。
どうせ資金繰り表を用意するなら、意味のある書類にしたいものです。これを機に、借入の返済予定を全てまとめてしまいましょう。
借りたお金をいつ返すのか、正確にまとめておくべきです。
あなたが貸す側なら、まとめていない人に貸しますか?
ここまでで資金繰り表は完成ですが、せっかくここまで作成したならば、元本だけで無く、支払利息と借入残高も整理してしまってはどうでしょうか。
PL上の支払利息と、実際の支払タイミングは異なります。月末だと翌営業日に支払ったりするからです。
しかしながら、総額が大きくずれているようだと、どこか計算が間違っているということになります。
貸す側の気持ちになって、返済予定を組み入れたフォーマットが以下となります。
銀行によってフォーマットが異なるので、どれを使えば良いのか悩まれると思います。
もちろん、各銀行が用意しているフォーマットを使うのが一番良いのですが、そうすると、銀行融資のためだけに、あまり意味の無い時間を費やすことになってしまいます。
私のフォーマットが信用出来ない方は、「政策金融公庫」のフォーマットが一番良いのでは無いでしょうか。
ただ、この「政策金融公庫」の資金繰り表フォーマットですら、変わります。
実際、2024年6月時点の政策金融公庫、資金繰り表の書き方が、2024年10月に公庫でダウンロード出来る書式と、内容が変わっています。
是非皆様も、融資のためだけで無く、経営に役立つ資金繰り表の作成をしましょう!
質問等ありましたら、suzuki@retro.jpまでお願いします。