新人の挑戦

当社には、「手に職を付けたい」、「どこの会社でもやっていける実力を身につけたい」、「商売の基本を学びたい」、「独立したり会社を立ち上げられる実力を付けたい」、と考えている人が多いです。
バイヤーの仕事は、仕入れて売るという一連の流れを経験できるので、「新規事業の立ち上げ」に役立つのです。
しかしながら、どうしても日々の業務に追われて、実際はなかなか新しいことにチャレンジ出来ません。

そんな中、新人のR君が、「車を仕入れて売ってみたい」と突然言い出しました。

彼は入ったばかりで、ブランド品の査定もおぼつかない状態でしたから、まだ早いのでは無いかという意見がほとんどでした。
でも、私はそのチャレンジ精神が無茶苦茶嬉しかったので、全てを任せてやってみてもらうことにしました。
後で聞いたのですが、彼は人より早く成長したいと考えていて、想像以上の結果を求めてチャレンジしたそうです。

実は、「商品を売る」と簡単に言いますが、以下の3パターンあるのではないでしょうか。

1、買った金額より安く売る
2、買った金額より高く売る
3、他の人が売っている金額より高く売る

メルカリで物を売るのが流行っていますが、やはり多いのは1でしょう。
「去年5万円で買った服、今年はあまり着ないと思うので2万円で売ってしまおう」という場合です。
R君もこの経験はあったようです。

でも、2は大変です。
買った金額より高く売るのは、実際にやってみたら至難の業です。

まずそもそもどの車がどれくらいの金額で売れるのかを知らなければ、仕入れることが出来ません。

もちろんR君は当社でブランド品の買取をしたり、販売をしているので、全くのド素人というわけではありませんが、上司に手取り足取り教えてもらって、「この商品ならばこれくらいで買いなさい」と言われて仕入れるのと、そもそも売れるかどうかわからない商品を仕入れるのとでは、天と地ほど違うわけです。

そこでR君は、まずどの車を仕入れるのか考えることにしました。
軽自動車を仕入れるのか、日本車を仕入れるのか、はたまた高級外車を仕入れるのか、悩み始めたらキリがありません。
もっと言うと、走行距離の多い車を安く仕入れて修理して売るのか、程度の良い車を仕入れて薄利で売るのか、考えれば考えるほど選択肢が増えて、結局何も仕入れられないで、時間だけが過ぎていきました。

3ヶ月くらい何も進まないで時間だけが過ぎていったので、私はもう諦めたのかな、とすっかり忘れていました。
しかし、ある日みんなで目標達成の飲み会をしているとき、こっそり相談を受けて、「今でも毎日車の相場を見ている。大体仕入れる車は決めたので、置き場所の相談に乗ってください」と言ってきたのです。
そこで、駐車場は私が用意して、車の保険にも加入し、仕入金額の予算も用意しました。

結局彼は、自分が買いたいと思う程度の良い車を仕入れて、薄利で売ることにしました。
その方が買ってくれたお客様が満足してくれてリピートしてくれるだろうと考えたのです。

「なんだ、普通の考えだな」と思うかもしれませんが、決してそんなことはありません。
程度の微妙な車を安く仕入れて綺麗に見せかけて売る方がリスクが少ないかもしれません。また、本当は自分が欲しいものを買うのではなく、売れる物を買うのが商売の鉄則です。私情を交えるとダメだと言う意見もあるのです。
彼の選択は考え抜いたあげくの決断で、しかも当社の考え方とマッチしていたので、自由にやってもらいました。

答えは無いのだが、必死に考えて決断し、リスクを負ってチャレンジする。
そのことが人を大きく成長させると思います。

R君は車を仕入れたので、次は売り始めました。
車の写真をどのように撮影するのか、商品説明はどのくらいするのか、いくらくらいで売るのか、これも全て彼が決めて販売開始しました。
ブランド品の場合、社内に撮影体制が組まれているのですが、車の場合、どこで撮影するのか、誰が撮影するのか、機材はどうするのか(カメラや照明など)、いつ撮影するのかなどに関してはケースバイケースです。
レンタル倉庫を借りる、プロのカメラマンを雇う、車を撮影してくれる外部のサービスを使うという選択肢がありますが、その分費用がかかります。費用がかかれば販売価格にも影響を及ぼします。

写真だけでなく、ページ制作もしなければなりません。こちらも、自分でやるのか、デザイナーに頼むのか、費用と時間を考えて、決めていきます。

これも後で聞いたのですが、販売開始後、売れるか売れないか、2週間ほど毎日ドキドキしたそうです。
人知れず、毎日何度もスマホを見ては注文が入っていないかどうか確認していたというのです。
ブランド品に関しては、自分が買い取った商品が売れるかどうか、あまり気にしなかった彼が、車に関しては毎日指がすり切れるくらいスマホを再読み込みしていたそうなのです。

私は何よりそれを嬉しく思いました。
自分にも経験があるのですが、一番始めの経験が一番鮮明に残っています。

株式会社retroを立ち上げて、初めて商品を出品してもらったとき、つまり仕入れさせてもらった時、本当にありがたく思いました。
この時は他社より高く買っていたので、今から考えれば当然かもしれませんが、それでも嬉しかったことを鮮明に覚えています。

多分R君もその気持ちを感じてもらえたのでしょう。
自分で売れるか売れないかわからないものを仕入れて売ってみるという経験は、何事にも代えがたい経験です。
この経験をすることで、お客様への感謝の気持ちが生まれるのだと思います。

幸い、車は2週間後に売れました。
でも、実は全然儲かりませんでした。
というよりも、人件費を考えたら大赤字だったのです。
それを聞いて他の社員の中には、拍子抜けしていた人もいるかもしれません。

しかし私は彼の行動は必ず今後に繋がるはずだと思っていたので、後日2人で焼肉を食べに行った時に「ボーナスを出すよ」と言いました。
それに対して彼はこう答えました。
「いや、結構です。今回は僕が至らなかったのでお客さんは信頼してくれず、安い金額でしか売れませんでした。でも、今回の経験を生かしてサービスを改善して適正価格で売れるようにします。そうすればちゃんと利益が出るはずなので、その時にください。」

私はそれを聞いて、R君の信頼に応えなければならないなと思いました。
R君は、ちゃんと成果を出したときに私が成果に応じた報酬を支払うと信頼してくれているからこそ、こういう返答をしたのです。成果を出したら払ってくれよというプレッシャーをかけてきたわけです。

今回のことはR君にとっても良い経験ですが、私にとっても非常に嬉しく、良い緊張感を持たせてくれる経験でした。

株式会社retroでは車だけで無く、不動産や、他の商材の取扱を増やしていきますので、興味を持った人は、是非一度遊びに来て下さい。

R君と一緒にランチに行きましょう!